もざいく-描くこと、言葉、素材が紡ぐ物語り-
2023年、北イタリア発祥の教育アプローチとして有名なレッジョ・エミリア・アプローチの巡回展が日本国内を巡り、青森県では八戸市美術館のスタジオで開催されました。
展覧会は「drawing(描くこと)」に着目した展示となっています。日本の事務局に当たるJapan Institute for Reggio Emillia Alliance(JIREA)が用意した展示用の24枚のパネル及び描くためのツールや素材を用いた会場構成及び家具デザインを担当しました。
パネルの配置については、無意識で歩いていてもパネルの順序通りに巡れるような、自然な動線を意識しています。3つのパネルから構成される△型のパネルを2つセットにゆとりを持った間隔で配置し、パネル間に素材などのパレットを配置することで内容の理解向上にも寄与することを意識しています。ビーンズの形をなぞるような一筆書きの動線で、24枚のパネルを見終わるとアトリエと映像の鑑賞エリアに進みます。
アトリエ・鑑賞エリアで使うテーブルやベンチもビーンズをモチーフにした形になっています。ビーンズ型のテーブルは一般的な四角いテーブルに比べ、方向性がありません。出っ張っている場所やへこんでいる場所など、利用者が自分のお気に入りの場所を探す楽しみもあります。
それは、子供たちの自主性を大切にするレッジョ・エミリア・アプローチの理念にも寄りそう形のあり方だと考えています。
ビーンズをモチーフにした柔らかな会場の雰囲気が、展示をキッカケに初めてレッジョ・エミリア・アプローチの理念にふれる方へのハードルを和らげてくれることも期待しています。
ビーンズテーブル・ベンチについては足の高さが調整できます。展覧会が終わった後で運営に携わったこども園に持ち帰り、実際の保育の課程で園児が活用することを念頭に計画しています。ベンチだったものも天板をアクリル板に変えることでライトテーブルとして使うこともできるよう、全ての家具は天板を変更でき、内部に照明を設置できるよう配線穴加工を施しています。展覧会という会期の限られた中での活用と、日常の保育での活用を同時に満たす仕様としてデザインしました。
Data
- 所在地
- 青森県八戸市
- 主要用途
- 展示会場構成及び家具デザイン
- 延床面積
- 展示範囲:97.19㎡
- 設計期間
- 2023.02-05
- 展示期間
- 2023.05.20-28
Credit
- 施工
- ビーンズ家具製作:中山建具工業株式会社
- 出展者
- 社会福祉法人愛育福祉会、JIREA
- 写真
- WAA Inc.
- 担当者
- 渡部良平、横濵久美子