14-54
十和田のまちなかにできた開かれた出来事を共有するスペースです。
道行く人が足を止め、今までとは違う出来事が起こっていると予感する、そんな感覚を創るにはどうしたらよいか? プロジェクトの対象となる建物は、アーケードのある商店街から直交するように、奥へ奥へと増築を繰り返していました。「間口に対して奥行きの深い建物形状」は、この通りの典型的な型です。
150年ほど前、最初の移住者はこの通りに集まり商いを始め、現在に至るまで町の中心として発展してきました。間口4間ほどの商店が軒を連ね、商店の奥には住居、その奥には畑を持つというのが当時の基本スタイルでした。時代の変化と共に手狭になった建物を大きくする際には、住居部分や畑の部分を使って、奥行き方向へと増築をしてきました。建物どうしが密接しているため通りからはその奥行きが認識しにくいですが、中に入ると想像以上に奥へと続く商店もあり、思いがけない体験となります。
この通りの特徴でもある奥行きの深い建物形状を顕在化し、通りを歩く人をその奥行きの中に誘うことで、新たな出来事に出会える賑わいの場となるよう考えました。
内部は、間口方向の壁を解体し奥行き方向を強調する大きなワンルームとすることで、抜け感のある開放的な空間になっています。活動の領域を分けるために設けたブースは、家具のような扱いとし天井には届かない高さとすることで、抜け感を阻害しないようにしました。壁や床はモノトーンを基調とし、家具は木製を中心とすることで、アクティビティなどの出来事が主役になれるような配色としました。
エントランスは道から3mほどセットバックさせ、外部も内部と同じ仕上げで揃えました。内部の出来事がまちに飛び出すようになることで、視認性の確保を図っています。
商店街に来たまちの人が違和感に気付き、ふと足を止めて中を覗き込むと他には無い抜け感に遭遇し、視線は自然と奥へと吸い込まれます。次第にその視線の途中で起こっている出来事に出会い、自然と中に足を運ぶことができればと考えました。そのようにして通りに溢れ出た内部の賑わいが、また新たな人の参加を促し、人から人へ連鎖していく新しい開かれた場になって欲しいと思います。
Data
- 所在地
- 青森県十和田市
- 主要用途
- 事務所
- 延床面積
- 272.09㎡
- 階数
- 地上1階
- 構造
- 木造
- 設計期間
- 2016.11-2017.01
- 施工期間
- 2017.01-2017.03
- 竣工
- 2017年03月
Credit
- 施工
- 有限会社直町建設
- 写真
- 株式会社Queen&Co.、WAA Inc.
- 担当者
- 渡部良平、横濵久美子