所沢聖地霊園 管理事務所
霊園には大切な人と別れることになり「悲しい気持ち」、久しぶりに故人または故人に所縁のある知人に会え「嬉しい気持ち」、散歩の途中で立ち寄り、緑に囲まれて「清々しい気持ち」など様々な想いの利用者が集まります。
そのような人々が集まって寛げるような場所はどうすればつくれるか?
打合せの度に霊園を訪れ、とてもきれいに整備された園内の風景は、「仕事」を忘れさせるくらい気持ちを和ませてくれました。それは開園して40年間、霊園が守り続けてきた、変わらないもの=「財産」でもあります。また、時代に流されずあり続けるこの風景は、常に変化しているとも言えます。自然により構成されたこの風景は、一日の中で刻々と変化し、季節によっても表情を変えます。
財産の一つには池原さん設計の大礼拝堂もあります。とても特徴的な形状をしており、各所のディテールも凝っています。しかし初めて建物を訪れた時、祭壇の奥に広がる芝生の斜面や、トップライトより降り注ぐ光など、それまでなんとなく感じていた霊園の風景との距離がグッと近くなるような感覚を覚えました。建物が背景に消え、霊園の風景に包まれているような感覚でした。
もともとそこにある、霊園の普遍的であり多様な変化をもつ風景と関わることのできる場所をつくれれば、そこに集まる人々の多様な気持ちに寄り添った場所を提供できるのではないかと考えました。
必要な機能それぞれの場所で行われる別々の行為や別々の空間が、随所で周辺環境と関わることによって、その周辺環境が施設としてのつながりやまとまりをもたらし、周辺環境によって関連付けされたそのまとまりを建物と呼んでみます。建物の外にいる時、建物の中にいる時。外で感じた風景を中にまで連続してつくれるか。中にいる方が外を感じることができるか。
休憩室、廊下、ロビー、トイレ、など機能で分けられた空間が、武蔵野の森、太陽の光、南から吹く卓越風、鳥の囀りなどの体験のつながりを通して一体(建物)となるような感覚です。それぞれの機能が随所で霊園の風景と結びついた結果として、各部屋は大きさも形状も仕上げも異なる多種多様な空間となりました。
最初は新築という違和感が強いと思いますが、何年か経ちこの建物が当たり前と感じることができた時、建物が背景として消え、大礼拝堂の様に霊園の風景をより強く感じられるようになれればと思います。時間とともにこの場所に根付き、時代の変化と共に風景と一体となる建物になって欲しいです。
(※日建設計との協力プロジェクト)
Data
- 所在地
- 埼玉県所沢市
- 主要用途
- 霊園(事務所・休憩所)
- 敷地面積
- 57424.14㎡
- 建築面積
- 1521.94㎡
- 延床面積
- 1361.57㎡
- 階数
- 地上2階
- 構造
- 壁式鉄筋コンクリート造
- 設計期間
- 2013.09-2014.11
- 施工期間
- 2014.12-2015.08
- 竣工
- 2015年08月
Credit
- 施工
- 西武建設株式会社
三位電気株式会社
株式会社ヤマト
村上工業株式会社
西武造園株式会社 - 構造設計
- 株式会社日建設計
- 設備設計
- 株式会社日建設計
- 照明計画
- 株式会社日建設計
- 写真
- 島尾望/株式会社エスエス
- 担当者
- 渡部良平