榑縁の家
敷地は烏帽子岳と陸奥湾に挟まれた、近沢川の畔に位置します。元々農地であったため木々も多く、豊かな自然に囲まれた環境です。この豊かな環境を積極的に取り込むような住み方を検討しました。
施主は定年退職後の余生を過ごすための住まいを求めており「平屋」「薪ストーブのある土間」「暖かい室内」の三つが大きな要望でした。
平面はリビング・寝室や和室などのアクティビティが固定化されている「室」と、それを取り巻く「榑縁」、薪ストーブのある「土間」により構成。大きく二つからなる「室」をずらして配置することで「榑縁」に空間の変化をもたらし、多様なアクティビティを誘発するように計画しました。
「榑縁」「土間」は外部との関係を調整する役割も果たします。中間期から夏季には建具を開放することで南の畑と一体となり、「室」との中間領域として風を取込みます。冬季には薪ストーブを焚くことで暖を取ることができ、建具を閉めて外部の冷たい環境から「室」を守るバッファーとしても機能します。外部環境との関係を選択することが生活にも変化を与え、一年を通して自分にあった暮らしができます。屋根は積雪量が多く敷地にゆとりがあるため、勾配屋根を採用しました。県産の杉を使用した登り梁は、内と外の境界を無くすよう「榑縁」「土間」から軒先まで天井を現しに仕上げて統一しました。取り合う壁や梁は登り梁勝ちになるようなディテールを採用しました。大工さんの苦労もあり44本ある登り梁全ての取合い部で、梁を加工する難しい収まりが実現しました。
今回のプロジェクトでは、「榑縁」「土間」に焦点を当て、拡張することで新たな生活のアクティビティや外部環境との関係を築くことができればと考えました。
Data
- 所在地
- 青森県野辺地町
- 主要用途
- 住宅
- 敷地面積
- 512.44㎡
- 建築面積
- 160.92㎡
- 延床面積
- 143.84㎡
- 階数
- 地上1階
- 構造
- 木造
- 設計期間
- 2011.05-2013.07
- 施工期間
- 2013.08-2013.12
- 竣工
- 2013年12月
Credit
- 施工
- A&Aマネジメント株式会社
有限会社中道建設工業 - 構造設計
- 金子武史構造設計事務所
- 写真
- WAA Inc.
- 担当者
- 横濵久美子