奥入瀬渓流温泉 灯と楓 / 焼鳥バル 薪（nina）

十和田市の奥入瀬温泉郷に位置する旅館のリノベーションプロジェクトです。
長期的な改修計画を基に、今回は１期工事としてフロント、ラウンジ、廊下、浴室のリノベーションを行いました。
敷地は奥入瀬渓流の下流に位置し、温泉郷と名のあるように公衆浴場、旅館やホテルなどが立地する宿泊エリアとなっています。エリア内にはスキー場もあり、地元の人々の冬の憩いの場でもあります。
しかし近年は、十和田市の人口減少や高齢化が進み廃業となる施設が増え、現在ではお昼の定食を出す飲食店と２～３の宿泊施設、スキー場が残る程度となっています。空家や空き店舗が増え、温泉郷としての賑わいを失いかけている地に、今回のプロジェクトを通して人々の新たな交流を促すことができればと考えました。
周辺は自然豊かな場所ですが、市街地からは車で30分ほどの距離にあり、夜になると宿泊施設以外は何もないまちとなってしまいます。
そこで、通常であれば旅館の宿泊客だけが利用できるラウンジを、夜に飲食ができる施設としてまちに開放することを試みました。地域の食材や地酒を楽しめる居酒屋として、他の宿泊施設の利用客や地域の住民が集える開かれた場所となることを目指すものです。
建築的には、新しい場所であることと地域の方々に親しんでもらえることの両立を目指し、青森杉や檜、陸奥湾の貝を使った漆喰、十和田石など地場産材を中心に構成しました。
元々フロントや宿泊客の休憩所を兼ねていたラウンジを地域に開かれた居酒屋として再構成し、旅館のフロントは動線を分けることで宿泊客だけでなく、誰もが気軽に立ち寄れる施設を目指しました。
床は裸足で利用できるよう畳を中心に見るだけでなく触れる事もできる、親しみのある内装としました。
人が集まり新たな賑わいが生れることで、地域の活気を取り戻す一役を担っていけることを願っています。