地域環境とつながるこども園
八戸市にて計画した社会福祉法人 愛育福祉会さんの運営する認定こども園 松葉こども園のプロジェクトです。
愛育福祉会さんは、イタリアのレッジョ・エミリア市発祥のレッジョ・エミリア・アプローチという教育方針を、地域の在り方に合わせながら取り入れた保育を行っています。今回は建築としてもレッジョ・エミリア・アプローチの思想を取り入れた空間を計画する試みとなります。
敷地は北西に櫛引八幡宮の参道と東に農村公園、南に手付かずの裏山という緑に囲まれた自然豊かな場所にあります。教育方針としても重要になる「連携」「連帯」の理念に基づき、周辺環境と連続する建築にすべく、南側の裏山から伸びたスロープを通して屋上に登れる計画としています。子供たちがグルグルと走り回りたくなるように楕円形状の屋上の園庭を提案しました。南側の裏山も整備をすることで敷地外の第二の園庭として活用し、建築を通して園児のアクティビティも周辺環境と接続した使い方を可能とします。屋上は転んだ園児のケガのしにくさと、冬季の積雪や除雪への対応を踏まえ、全面をウレタン塗膜防水+保護シートにて仕上げ、立ち上がりの無い納まりとして計画しました。
内部は、エントランスを抜けるとハイサイドライトから光が降り注ぐ明るい遊戯室があり、そこから各保育室へと移動する動線となります。これはイタリアの街並みのように、広場(遊戯室)が中心となって周囲を建物(保育室)が囲んでいるような構成を参照しています。レッジョ・エミリア・アプローチの中では、年齢による保育よりも園児の興味に合わせた保育にも力を入れています。まず遊戯室に集まり今日はどのような活動を行いたいか、保育士のリードのもと園児の要望を反映した保育活動を行う際にも使い勝手の良い配置計画となります。遊戯室に給食室を隣接させることで、お昼にはランチルームとしての利用も可能です。
各保育室やトイレは、壁や天井の構成・仕上げなどを少しずつ変え、バリエーションを持たせています。木や漆喰、タイルなど様々な表情や質感の素材に触れることで園児の感性を刺激するとともに、活動内容に合わせて保育の場所を選択することも可能です。少し暗い部屋では映写機などを活用した光遊びを楽しむこともできます。屋外と接続した保育も容易にできるよう、南に面した保育室は軒下にあるテラスを通して園庭に直接出て、泥遊びや水遊び・雪遊びを楽しむことも可能です。
遊戯室には、園児が自由に使える素材を用意し、自由な表現をサポートします。保育終わりで保護者のお迎えを待つ間などの活用も可能となり、通常であれば利用頻度の低くなる遊戯室を日常の中で効果的に活用することができる計画です。
Data
- 所在地
- 青森県八戸市
- 主要用途
- 幼稚園・児童福祉施設
- 敷地面積
- 2,291.02㎡
- 建築面積
- 765.10㎡
- 延床面積
- 520.02㎡
- 階数
- 地上1階
- 構造
- 木造
- 設計期間
- 2023.06-2024.05
- 竣工
- UNBUILT
Credit
- 設計協力
- SOTO ARCHiTECTS
- 構造設計
- 合同会社 Graph Studio
- 写真
- 株式会社WAA
- 担当者
- 渡部良平、横濵久美子