TSUNDOKU BOOKS / cozy

十和田市にある店舗（本屋）兼民泊のリノベーションプロジェクトです。１階は「ツンドクブックス」といい、編集者としても活躍する店主が携わった本や、積読という興味を持って買ったもののまだ読めていない本、海外で仕入れた本など、店主の個性が反映された本が並ぶ本屋です。２階は「コージィ」といい、民泊用にリビングやキッチン・シャワーユニットなどの水廻りの共用部とプライベートな寝室を設けています。

ツンドクブックスは、本を扱う実店舗の存在価値が問われる中、単に本好きの方だけが集まる場所ではなく、地域の学生にも気軽に足を運んでもらえるような空間を目指し、店舗への入りやすさと居心地の良さを両立できる空間の在り方をスタディしました。
店主側からは、ある程度店内を見渡せること。
お客さん側からは、本に囲われている雰囲気、本を試し読みしながらちょっとした軽食を楽しめ、一人で来ても友達と来ても楽しめ、他のお客さんとも共存できること。
そのような双方からの視点を尊重しながら様々な案を検討し、最終的には長方形の長手にそれぞれメインの本棚を配置し、中央が移動空間となるような全体を大きく３分割する計画としました。エントランスは中央に設け、外部から斜めにセットバックさせることで、外部用のディスプレイを見ながら自然と入店しやすい動線としています。本棚は左右それぞれコの字に配置することで本に囲われた雰囲気を出しつつ、棚の高さを変えることで開放感と没入感をそれぞれ感じられるようになっています。棚の高さを抑え店主からの視認性を確保しながら、高さのある棚の裏であえて死角を作ることで、お客さんの緊張感を和らげる効果も期待しています。また、棚の位置を左右に分けることで、新刊と古本、海外の本、編集に携わった本、テーマに合わせた推薦本、などコンセプトを持ってレイアウトすることも可能となります。
既存の壁と天井は塗装を施すのみとして費用を抑えつつ、本棚や照明用の木パネルによって既存の雑多な部分に目が行きにくくなるようなデザインとしています。

コージィは、宿泊の在り方が観光メインからちょっとした暮らしにシフトしている状況も踏まえ、連泊も想定した計画としています。近隣に温泉施設があるため、シャワーやトイレ・洗面の水廻り空間を最小限に抑え、規模に対して大きめのキッチンを設けました。十和田の季節感のある食材を使い料理を楽しみながら、一体となっているリビングダイニングでの食事を通し、土地の食文化を体験することができます。床にはスギのフローリングを貼り、上足に慣れないインバウンドの方でも歩行しやすい計画としています。寝室には小上がりのベッドスペースと仕事をしながらの宿泊者も想定し簡易なテーブルを設けました。